プライベートリゾート感漂う庭

この現場との運命的な出会い

自分自身の計画や施工に対する意識を変えさせてくれた現場である。

特に700平米以上の広い土地というか庭スペースと高低差が6m近くある土地全体の計画と施工である。

特に実測した資料もなく、現場調査での設計資料作成という計画者にとってはハードルが高い物件との出会いであった。

700平米の広さの敷地(現調時)
700平米の広さの敷地(現調時)

すでに2世帯が居住しており、庭部分の整備というか景観づくりがメインであるが、そんなに難度のある計画や施工となるつもりはなかったが、思わぬところからこの敷地の難しさを知ることとなる。
 

現地調査では…

細かく現場を調査
細かく現場を調査

現況の把握を踏まえあるものを残しながら計画していくので、かなり正確な調査が必要となる。

そこで、社長と二人で現地調査をし
「もう大丈夫か?」という質問に対して
ついつい「大丈夫です。」と答えてしまった

社長が車に乗り込み、ここで簡単な図面化しろと言われ、図面を起こすと自分がいかに所々見落としていたのかを痛感した。

 

なんと図面化ができないのである。

 

いつものことだが、ここからは社長は手伝ってくれない…

蚊に手足を相当刺されながら4回ほど現地を測り直し、やっと図面がつながった。

 

現場調査がこんなに真剣でこんなに難しく、しかも重要だということを改めて痛感したのと、この土地に対する想いも深まっていくのを感じていった。

 

隅々まで調査している様子
隅々まで調査している様子

次に考えたのが、この高低差のある坂道をどうやって材料を運ぶかである。

 

特に現在ある側溝に蓋をしたいということで、その蓋自体20キロ近くあるものを90枚ほど下まで運び蓋をしなくてはならない。

これはかなり大変な仕事だ! 

クレーンを設置することもできず危険度も高いので注意深くやらなくてはならない。

 

オーナーの希望は足の弱ってきたお母様が回遊しながら楽しめるということと、子供たちが庭でお茶や食事を楽しんだりできるようにしたいというのがメインで、ちょっとしたプライベートリゾート感漂う庭というか、空間にしたいということでした。

 

そこで回遊式の部分は緩い階段ステップとスロープをうまく組み合わせないと現場は収まらない。

また、手すりも充実していないと危ないシーンができるので、ユニバーサルデザイン思考に心がけ、楽に楽しめるように心掛けた。

 

お母様の為にスロープに手すりをつけ
お母様の為にスロープに手すりをつけた

そこで、まず土留めやスロープを止める壁に割り栗石の石積みとした。

思った以上にブロックなどより味わい

横から見た石積のスロープ擁壁
横から見た石積のスロープ擁壁

この味わいは何かと思うと、やはり自然な陰影が石の凹凸から生まれる面白さだと気が付く。ブロックではこんな有機的な印象を作れない。

保存樹木の「泰山木」

子どもたちが外で楽しめるテラスを大きなタイサンボクの下に作った。

 

このタイサンボクは見たこともない太さだ。直径で1.5mぐらいある見事な大木である。

 

この下での団欒はここに暮らした先祖の話題も引き出してくれ、なかなかここの家族でしかわからない時空のテラスである。

 

また、高台なので富士山が良く見える素晴らしいポテンシャルのあるテラスである。

 

回遊式のアプローチは曲線を中心に周りの芝生と自然な雰囲気を演出できるように工夫しながら、ところどころに休めるような広場も設けていった。

 

所々休めるようにスロープ途中に設けたウッドベンチ
所々休めるようにスロープ途中に設けたウッドベンチ

 

もともとあったハイデッキからの動線も確保し、造園デザインの構成となっていった。

娘さんのために2箇所の家庭菜園

一部のオーナーの娘さんがやりたいという菜園を作り、その下も耕耘をかけトマトやナスのような深根性の野菜も対応できるように施工していった。

 

出来上がるうちに上からの見ていると、いろいろなゾーンを結ぶアプローチがフットパスのようなかわいいリズムカルな小径のように映り、庭全体がとても素敵な空間となっていった。

 

また、ところどころに思いがけないベンチを作ったりと遊び心も入れ、毎年訪れる春を楽しみにできる暮らしと一体となった庭となっていった。

 

技術的には勾配地で広いので雨水の処理として、宅内処理を基本に、浸透トレンチを作りオーバーフローした雨水だけ側溝に流すようにした。

 

今回は植栽としてすごいものはあまり植えていないが、「ニューサイラン」や「バショウ」など植えてある。

プライベートリゾート感漂う植栽
プライベートリゾート感漂う植栽

お客様にも喜んでいただき、自分でも大いに学ぶことができた大切な現場でした。

 

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